龍の天廊書斎

龍火のブログ。創作小説など置いてます。

そして彼らの運命は隣り遭う。

深くて暗い洞窟の中。
彼は静かに横たわって居た。

ここに閉じ込められる以前の記憶は何故か殆どない。
激しい熱を帯びている左肩がどうなっているのかも、その原因も分からない。
身体と心はこんなにも冷えきっているというのに。

ただ、何故だか酷く疲れていて、同時に何かがどうしようもなく悲しいとだけ感じていた。

昏い昏い闇のなかに一人。
動き回ってみるも出られそうな所は見つからない……と、奥の方に何やら光が見えた。


「………カンテラ…?」
出口かと期待したが、光源の正体は照明器具だった。
少し期待外れではあったがよくよく考えてみなくてもこの闇の中で照明の存在は非常にありがたいものである。
それにやっと見つけたこの光を置いていくのがどうしてだか怖かった。

彼はしばしカンテラを見つめる。
硝子の中でゆらゆらと揺れるその赤に、ふと何かを思い出しかけたのも束の間、その何かは考える間もなくふっと霧散してしまった。




時同じくして破滅の竜に滅ぼされた街ラクルガシア。
焼け落ちた建物の下から這い出てきた瀕死の少女の瞳は"きらきらと輝いていた"。

『あの方は一体誰なのでしょう…………私達の街を滅ぼしてしまった…あの凍えるような瞳……』

自分の国を滅ぼした竜。
なのに幼い彼女の心に宿るのは、あろうことか『憧れ』であった。





*青の王と氷の姫。
彼らを結びつけるのは過去に閉ざされた記憶。

『初めまして。私の王さま』
『貴方をお慕いしておりました。ずっとずっと』