龍の天廊書斎

龍火のブログ。創作小説など置いてます。

哀れな道化は今日も逝く。

それは言うなれば生じた時から決まっていた運命だった。
あらゆる物語を渡る事ができる能力を有す代わりに初めから持ち得なかったもの。

彼は世界に交わらない。否、交われない。


何故なら彼は、この世界において他とは異なる性質を持つ異存在だから。

交わろうとすれば世界は彼を拒み、その存在を消す。
しかし彼は異質な存在ゆえまた生じ、蘇る。
その繰り返しだ。

傍観者以上になれなくとも構わない、と彼は思っていた。
しかしそれも始めのうちの事で、彼は徐々に自分が誰にも認められないことをどうしようもなく虚しく、また寂しく思うようになっていった。

そんな日々の中で彼の内にいつしか生まれたとても強い、しかしこの上なくささやかな『願い』はしかし、歪んだ世界によって叶えられる事はなく。
次第にそれは激しい憎しみへとその姿を変化させていった。


*どうしたって認められやしないなら、そんな世界はいっそ壊してしまおうか。

『一度でいいから認識して欲しかった……本当にただ、それだけだったんだ』